介護において、援助する側はどんなに経験が浅くても、自信がなくてもそれを利用者の前で出さないことが基本です。
それは、利用者が不安になりスムーズな支援ができなくなることがあるからです。
ただ、どんなに安心して利用者に支援を受けてもらおうと冷静に対応しても、自分にはどうすることもできない理由で、支援が思うようにいかないこともあります。
今回は、利用者が不安を感じてしまった時の話です。
60歳代独居の女性の入浴介助
脳梗塞で右半身に麻痺の残る60歳代独居の女性の援助を担当することになりました。
身長165㎝、体重80kg以上という大柄な方ですが、室内補装具を装着すれば杖使用によりほぼ自立した生活ができていました。
その当時、私が行う支援内容は、自宅での入浴介助のみ。入浴は、本人の生活の中の一番の楽しみとのことで、いつもヘルパーの訪問を心待ちにしているとのことでした。
先輩ヘルパーに同行
先輩ヘルパーから入浴介助の方法を引き継ぐことになり、初めて利用者宅へ同行訪問しました。
室内や浴室の環境整備はしっかりとできていたので、本人のできる動きは自分でやっていただきながら、段差のある浴室への出入りや浴槽内の出入りの一部介助、自分では届かない部分の洗身介助など、一連の流れを確認し、次回訪問する旨を伝えたあと、職場に戻りました。
「あなたで本当に大丈夫なの?」
いよいよ援助日を迎え、訪問しようとしていた私に、本人から「今日は体調が良くないので入浴はキャンセルします。」との電話連絡が入ったのです。
普段、よほどの体調不良でなければ入浴を中止することがないため、様子確認のため訪問をし、じっくりと話を聞く時間を持ちました。そこで、何故今回入浴をキャンセルしたかという理由を教えてくれました。
私は彼女から見ると、とても身体が小さく、また体力がないように見えて、「介助されるのが不安になった」とのことでした。
その後、じっくりと話をする中で、まずは1度介助を受けてみて、それでも不安が消えないようであれば、担当を交代するということで、了解を得ることができました。
介護をする側、受ける側で体格差が大きい場合は、今回のように介護を受ける側の不安が大きくなることもあります。
また一方で、介護する側も介護するにあたり、その体格差や介護の方法に、不安や危険が伴う場合もあるため、十分自分で納得をした上で援助を行うことが大切です。
今回の利用者は、新しい担当者との間でコミュニケーションがまだ十分に取れていなかったことも重なり、より不安が大きくなったのだと痛感しました。
まとめ
介護には、信頼関係の構築も非常に重要です。その後の利用者はというと、試しの介助を行った後に一言。
「あんた小さいけれど、結構力があるね!」
と、援助のお許しが出たので、無事に援助開始となりました。