介護保険スタート以降は混乱が続いていたものの、しばらくすると自宅に訪問するサービスだけでなく、デイサービスやデイケアなど、通所系のサービスの需要も増えました。
通所系のサービスは、利用者本人への支援であると同時に、介護者の負担の軽減にもなると考えられ、ケアマネの作成するプランに組みこむことが多くなっています。
それぞれの通所施設も「うちの施設にはこんな特徴がある!」という強みがあり、その情報や利用者の状況、希望等をもとに、施設選びをしています。
しかし、どんなに利用者のために通所サービスが必要であると考えても、通所の利用自体に消極的だったり、頑なに拒否をする利用者もいるため、非常に苦労することがあります。
「通所介護は私が通う場所ではないわ」
看護師として、長年大学病院に勤めていた80代の独居女性。ここ数年間、外出する機会が減り、認知症の診断を受けてから、さらに自宅に閉じこもりがちの生活になっていて心配だと、別居の娘さんから相談がありました。
本人は、長年看護師として活躍していたことが自慢で、訪問の度に看護師時代の話をしてくれました。
本人自身、日常の生活に何の不安も感じていませんでしたが、常時敷きっぱなしの布団の上で、日中も寝たり起きたりの生活が続いていました。
本人が、日中活動的な生活をすることを目標に、デイサービスの利用を本人に提案しましたが「私が通う場所ではないわ」と拒否。
80代の元ベテラン看護師が出勤?!
そこで、利用予定のデイサービスの相談員と一緒に自宅を訪問した際、「うちの施設で看護師として働いてもらえないでしょうか?送り迎えも昼食もつきます。」と、相談員から話をきり出しました。
すると、今まで関心さえ示さなかった本人が「送り迎えがあるなら、働いてもいいわよ。」と即答!それを機に、本人の送迎つきの出勤がスタートしました。
元看護師の母からの嬉しい報告
「私、時々働きに出かけてるの。そこで血圧を測ったり、色々と病気の相談にのったりしてね。忙しいけれど、病院まではちゃんと送り迎えがしてくれるから心配いらないわ。」
娘さんからかかってきた電話に、うれしそうに話をしていました。
まとめ
本人にとっては、デイサービスに通っているという認識はなく、毎回看護師として、楽しそうに職員や他の利用者と交流する姿がそこにはありました。
また、そこには職員の皆さんが自分達の血圧を測ってもらったり、健康のことや病気のことを質問したりなど、楽しく過ごせるよう細かい対応がありました。
そのことにより、毎回休むことなく通い続けられ、結果として本人の意欲の向上にもつながっていったのです。通所の職員の皆さんの演技力と、何とか利用につなげたいという意気込みに、頭が下がりました。