介護保険の中でよく問題になるのが、訪問介護の生活援助サービスです。
介護保険サービスは「自立支援」を意識したケアプランやサービス提供が求められますが、訪問介護の現場では様々なトラブルが多い現状です。
本来ケアマネージャーの立てる介護サービス計画に基づき、訪問介護の計画も立てられているので、それに沿った支援が行われれば、誰がやっても同じ援助が提供できることになるはずですが…介護士と利用者の認識に相違があります。
「ヘルパーが入っているのに、何故やってもらってはいけないのか?」「お金を支払っているのだから、やってもらうのは当然」と、なかなか利用者に理解してもらえないこともありますよね。今回はヘルパーと一緒に料理を作る援助プランが組み込まれた利用者の方のお話しです。
1戸建て住宅に住む70代後半高齢者夫婦
夫婦ともに要介護1の認定を受けデイサービスとヘルパーによる生活援助のサービスを受けている利用者。妻は軽度の認知症により、得意だったはずの料理の手順がわからなくなり、意欲低下も見られてきたため、ヘルパーと一緒に料理作りの援助をプランに入れました。
それにより、ヘルパーの声かけや見守りがあれば、食材を切ったり、料理の味付けや飾りつけ等まで自分で出来るようになり、別居の娘さんもとても喜んでいました。
しかしある時、ヘルパー事業所から担当のヘルパーが交代となり、新しいヘルパーから、援助時間が足りないとの報告があったと連絡を受けたのです。
援助時間が足りない理由
今回の利用者宅での援助内容は、昼食と夕食の調理支援のみだったため、時間的には問題ないように思いましたが、状況を確認するため、訪問介護責任者とともに訪問しました。
その中で、援助時間が足らなくなる事情が確認できたのです。
ヘルパーの訪問は10時開始でしたので、その時間に合わせて訪問すると、何と夫婦仲良く遅い朝食中。また、キッチンをのぞいてビックリしました。
この家のキッチンにはシンクが2つあり、そのシンク内には何食分か、使ってそのままの食器が山積みに入っていました。
前任のヘルパーは、どうやら本人達の朝食の間に、そのシンクにたまった食器を洗い、食後きれいに片付いたキッチンで本人に対しての調理支援を行っていたのです。
今回は、妻や娘さんとも話し合いをし、ヘルパーの訪問前に食事を済ませ、食器も必ず洗っておくことで了解を得ました。
利用者さんが勘違いしてしまう認識の背景にあるもの
娘さんの話では「我が家には昔から家政婦さんがいて、母は料理をすることは好きでしたが、それ以外の家事は、みな家政婦さんがやってもらっていた」とのこと。
恐らく妻は、自分で出来る能力がある時代から、家事全般の援助を受けていたため、ヘルパーに何でもやってもらってよいと思っていたようです。
まとめ
「自立を支援する」ということの難しさをとても感じました。その後、食器洗いは妻が行い、食器拭きが、夫の新たな役割として追加されることになったのです。